著者・あらすじ
モーガン・ハウセル
ベンチャーキャピタル「コラボレーティブ・ファンド社」のパートナー。投資アドバイスメディア「モトリーフール」、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の元コラムニスト。米国ビジネス編集者・ライター協会Best in Business賞を2度受賞、ニューヨーク・タイムズ紙Sidney賞受賞。妻、2人の子どもとシアトルに在住。
訳者:児島修
英日翻訳者。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。主な翻訳書に『DIEWITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』『成功者がしている100 の習慣』(以上ダイヤモンド社)、『やってのける』(大和書房)など。
あらすじ
累計100万部突破のベストセラー。米Amazon.comで1万件超の高評価レビューを受けた一冊。「富が減ってしまう原因」「お金の真理」「貯蓄と投資の重要性」など、お金の価値観が変わる知識をお届けします。
1. 「富」が減ってしまう原因
「富」を得るためには、まず「富」が減ってしまう原因を知っておかなければなりません。富が減ってしまう一番の原因とは何でしょうか?それが、「裕福さの誇示」です。「裕福さの誇示」とは、外見の豊かさのことで、例えば、「高級車」。一般的に、「高級車に乗っている人はお金持ち」というイメージがあります。しかし、それは外見の豊かさの「一部」を見ているだけであり、実際にお金を持っていることとイコールではないのです。
事実として、1000万円の高級車を持っている人は、車を買う前よりも手持ちのお金が1000万円少ない、または1000万円の借金をしていることになります。著者が「ロジャー」という男に出会った時、彼はポルシェに乗っていました。ポルシェに乗っているから、金回りがいいと思っていましたが、ある日、ロジャーはホンダの中古車に乗ってきました。「ポルシェはどうしたんだ?」と聞いたら、「車のローンを滞納して、差し押さえられた」と答えたのです。なんとも滑稽な話ですが、実はロジャーのような人は、ごまんといます。
なぜ、人はそこまでして、「裕福さを誇示」しようとするのか?それは、人が目に見えるものから「豊かさを判断しようとする」からです。相手の経済的な成功を測る時、銀行口座の中身や、証券会社の明細書を見ることはできないため、目の前にある情報を頼りにして判断します。しかし、真の富とは「目には見えないもの」です。著者は「富とは、購入しなかった高級車であり、買わなかったダイヤモンドである。身につけていない時計、来ていない服、乗らなかったファーストクラスの座席」と述べます。つまり、富とは、目に見えるものに変換されていない金融資産のことを指すのです。
2. お金とは?
本書は、お金にまつわる人間心理についてまとめられたものです。ここで気になるのは、「そもそも、お金とは何で、どういった性質を持っているのか?」ということです。その答えとして、著者は「お金の真理」について11項目あげています。ここで取り上げるのは、「エゴを減らす」「時間軸を長くする」「間違っていても問題ないと考える」をあげます。
「エゴを減らす」
そもそも貯金とは、「収入からエゴを差し引いたもの」です。将来のために、今買うものを抑えることが重要となります。どれだけお金を稼いでも、今この瞬間を楽しむことばかりに使ってしまえば、富は永遠に築けません。先に述べたように「富は目に見えないもの」ということを念頭に入れます。
「時間軸を長くする」
投資で結果を出すための最大の秘訣が「時間軸を長くすること」です。なぜなら、時間は小さな積み重ねを大きく膨らませ、大きな失敗を風化されてくれるものです。運を掴んだり、リスクを減らしたりはできませんが、時間をかければかけるほど、望む結果が得やすくなるのです。
「間違っていても問題ないと考える」
たとえ、上手くいかないことがあっても「問題ない」と考えます。なぜなら、結果の大部分をもたらすのは、ごく少数の投資だからです。投資対象問わず、うまくいっていないものが多くでも構わないと考えます。注目すべきは、個々の投資ではなく、ポートフォリオ全体です。「うまくいかない投資がたくさんあり、かなりうまくいっている投資がわずかだけ」の状態は、最良のシナリオになるといいます。その理由は、上手くいっている投資は、実際よりも素晴らしく見え、上手くいっていない投資は必要以上に惜しいと思えるからです。
3. 「貯蓄」と「投資」について
著者は、経済的成功を手に入れるための重要なファクターとして「貯蓄」と「投資」をあげます。「貯蓄」に対する考え方は、「贅沢をせず、身の丈に合った生活をする」です。一見、当たり前のことを言っているようですが、これこそが基本中の基本であり、経済的自立のスタートとなります。そもそも人は、ある一定の収入レベルを超えると、「贅沢な暮らしをしたい」という気持ちが生まれます。この時、どれだけその気持ちを抑えられるかが、命運を分けるのです。
ではどうしたら、この気持ちを抑えることができるのか?それは、「収入以下の生活レベルを保つこと」です。「他人に後れをとらないように」といった気持ちや、「まわりに対する見栄」は、誰もが抱えるものですが、「収入以下の生活レベル」を保っていると、自然とそのストレスがなくなるのです。次は「投資」に対する考え方です。著者が試行錯誤の末に導いた結論は、「インデックスファンド」です。なぜアクティブな個別株ではなく、インデックスファンドなのか?
それは、インデックスファンドであれば、個別株によって生じるリスクを負うことなく、目標を達成できるからです。低コストのインデックスファンドに数十年かけて投資し、下手にいじることなく複利で運用すれば、リスクを抑えながら、経済的目標を達成できるのです。そもそも、経済的成功は、「運」に左右され、「どう振舞うかが」が重要になります。それらは化学や物理学のようなものではなく、複雑で測定が難しい人間の心理や行動が大きく関わっているからです。
まとめ
『サイコロジー・オブ・マネー』をご紹介しました。著者は冒頭にて、本書の主張を述べています。「お金と上手く付き合うには、頭の良さより、行動が大切だ」。わたしたちは、お金に対して、「なにより知識が重要だ」と考えます。しかし、知識とは言わば、「起こったこと」に関することであり、「これから先のこと」ではありません。投資といった「未来」を考える時、知識のみならず、どう振舞うかといった「行動」が重要だったのです。