著者・あらすじ
鈴木亮
大手企業のプロモーションを手掛けるイベント会社、(株)グッドウェーブプロモーション取締役。30歳まで、フリーターであった経験を活かして、非正規雇用者である20代の若者たちを立派な社会人に育て、非正規雇用者の雇用促進活動を行う。
あらすじ
スタッフ・マネジメントについて解説した一冊。「アルバイトにする理由」「アルバイトに仕事を任せるには?」「仕組み化するには?」など、アルバイトを戦力化する方法をまとめています。
1. 正社員よりアルバイト
「正社員は店長一人、残りはパートやアルバイト」といったお店は、思いのほか多くあるものです。忙しくて手が回らない時、「正社員がもう一人いれば…」と考えるのが普通でしょう。しかし著者は、「アルバイトを戦力化すること」をすすめます。その理由は、アルバイトやパートなしでは、企業活動が難しくなっていることがあげられます。少子化によって人材不足に陥っている今、アルバイトやパートの戦力なしに、企業活動はできないのです。アルバイトの活躍の場は広く、代表例は飲食業、アパレル業、サービス業、製造業などで、高級ブランドの販売員もアルバイトという企業が存在します。近年では、IT業界のニュース配信担当やエンジニア。そして、あのディズニーランドも9割がアルバイトで構成されていると言われます。
一般的に「正社員でなければ、仕事の質は高められない」というイメージがありますが、これら事実を踏まえると、アルバイトやパートでもやり方次第で、仕事の質を高められるのです。しかしそうは言っても、アルバイトやパートは保険や保障があるわけではありません。時間内でしか働けないことや責務もありません。そんな彼らを戦力化することは、可能なのでしょうか?ここで重要となるのが、アルバイトに仕事を任せようとする「意思」と「仕組み」です。
某讃岐うどんチェーンを展開する会社では、なんとパートを店長に抜擢する取り組みを始めました。ここ4年で800店舗近い全店長をパートに切り替える予定です。保険や保障もないパートに、どうやって責任ある仕事を与えるのか?報酬や待遇を変えていくことはもちろんのこと、それ以上にやりがいを感じさせ、お金以上の報酬を与えることが求められます。アルバイトやパートを戦力化するには、彼らを大切にし、辞めない環境をつくることが必須となるでしょう。
2. 仕事を任せる時の注意点
報酬や待遇を良くしたからと言って、アルバイトやパートが納得して働いてくれる保証はありません。ちょっと想像してみればわかりますが、上司から「君に仕事を任せるよ」と言われたら、誰だってネガティブなイメージを持つでしょう。仕事を任されれば、責任がのしかかってくるので、良いこととして受け取れません。正社員ならまだしも、アルバイトやパートであればなおさらです。では、どうすればうまく仕事を任せることができるのか?
まず認識すべきことは、「仕事を任せる」ということが、相手が誰であっても「感情に左右される」ことです。仕事の任せ方、伝え方、伝える内容によってモチベーションが大きく左右されるからです。著者は、「謙虚になることを意識すべき」と述べています。トッププレーヤーから新人マネージャーになったつもりで謙虚になり、相手に合わせることが重要なのです。次に考えるべきことは、「アルバイトにとって仕事とは何か?」を認識することです。そもそも、アルバイトにとって、仕事とは「お金を稼ぐこと」です。
仕事をする大前提は「お金を稼ぐ」ことであり、ここに議論の余地はありません。ここでやるべきことは、仕事に「お金以外の意味づけをしてあげること」です。仕事のやりがいや楽しさ、仕事の意味を教えることで、「お金以外」の報酬を感じることができます。以上を踏まえると、アルバイトやパートに仕事を任せるには、自分自身が謙虚になり、彼らにお金以外の報酬を理解させることだったのです。
3. 重要なのは「仕組み化」
では具体的に、アルバイトを戦力化するためには、何をすればいいのでしょうか?それは「仕組みづくり」です。著者は、「アルバイトに任せる仕組み」を6項目あげていますが、ここでは、「評価のしくみ」と「やりがいを作るしくみ」の2つをあげます。
「評価のしくみ」
著者の会社では、「360度評価」を行っています。ここでいう「360度評価」とは、一般的なものと違い、「定期的なアンケート調査」を行うことです。5月、6月、11月、12月の年4回に、全アルバイトスタッフ及び、社員を対象にアンケートを取ります。なぜこの時期なのかというと、「繁忙期であること」「毎月だと負担になる」「毎月だとマンネリ化する」「社内表彰式の開催に合わせている」といった理由からです。アンケートの内容は、「今月、一緒に仕事をしたメンバーの中で、良い印象に残っているスタッフを1名以上教えて下さい。また選出した理由も教えてください」といった簡単なものです。ただアンケートを取るだけで、見えないものが見えてくるといいます。
「やりがいを作るしくみ」
著者は「やりがいを作るしくみ」として、株式会社エー・ビーカンパニーの「塚田農場」を紹介しています。近年、急成長を遂げている居酒屋チェーンで、さまざまなアルバイト向けの取り組みを行っています。もっとも有名なものとして、客単価4000円の1割の400円までであれば、「アルバイトの自由裁量でサービスを行える仕組み」です。例えば、お客さんが食べ切った地鶏の鉄板をいったん下げて、その鉄板の上で残った地鶏の油で、ガーリックライスをつくり、無料提供するといったものです。お客様が喜ぶことはもちろんですが、「400円」という権限をアルバイトに与えることで、やりがいや楽しさを生み出しているのです。
まとめ
『仕事の99%はアルバイトに任せよう!』をご紹介しました。著者は最後に、「アルバイトであっても社員同様に仕事の意義や意味を見つけることは大切」と述べています。職場では、「アルバイトだから…」といって特別な扱いをすることが一般的です。しかし人手不足が懸念されるこれからの未来は、アルバイトも戦力になってもらう必要があります。やりがいや楽しさを共有できれば、会社、働く人、双方に恩恵が受けられるでしょう。