【書評】IT時代で生き残る術『システムの問題地図 ~「で、どこから変える?」使えないITに振り回される悲しき景色』

【書評】IT時代で生き残る術『システムの問題地図 ~「で、どこから変える?」使えないITに振り回される悲しき景色』

情報システムを導入したにも関わらず、「効率が上がらない」「逆に仕事が増えた」という声があがります。一体、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?それは、わたしたち人間がシステムを「使いこなせていない」「理解していない」ことが原因でした。今日は、システム問題についてまとめた一冊をご紹介します。


著者・あらすじ

沢渡あまね

1975年生まれ。あまねキャリア工房 代表。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。企業の業務プロセスやインターナルコミュニケーション改善の講演・コンサルティング・執筆活動などを行っている。NTTデータでは、ITサービスマネージャーとして社内外のサービスデスクやヘルプデスクの立ち上げ・運用・改善やビジネスプロセスアウトソーシングも手がける。現在は複数の企業で「働き方見直しプロジェクト」「社内コミュニケーション活性化プロジェクト」「業務改善プロジェクト」のファシリテーター・アドバイザーなどを行う。

あらすじ

累計15万部の人気シリーズが「システム問題」についてとりあげます。「なぜ使えないのか?」「ムダになる理由」「抜け・漏れが発生する原因」など、システム導入で起こりがちな問題を解明します。

1. なぜ使えないシステムが生まれるのか?

一般的に情報システムといえば、「仕事を一気に引き継いでくれるスグレもの」といったイメージがあります。しかし実際は、すべてのシステムが重宝されているかといえば、そうではありません。残念な「使えない」「使われない」情報システムは、思いのほか存在するのです。ここで疑問なのが、なぜこのような「使えない・使われない情報システムは生まれてしまうのか?」です。著者はその原因について次の6つをあげます。

① システムありき
② パッケージありき
③ ウソくさいROI
④ 時代遅れ
⑤ 事前のシミュレーション
⑥ もはや誰も使っていないまま放置

ここで取り上げるのは、①システムありき、③ウソくさいROI、④時代遅れの3つです。

① システムありき

これは、上層部や決定権者の言われるがままに、システムを導入してしまうことを指します。彼らは「システムを導入すれば、問題がすべて解決できる」と思ってシステム化を急ぎます。業務の効率化や生産性ではなく、そのシステムを作ることが目的になっていることが「使えないシステム」を生み出すのです。

③ ウソくさいROI

ROIとは、「Return On Investment」の略で、「投資収益率」や「投資利益率」といった意味です。システム投資の見返りとして、どれだけの効果が得られるかの指標のことを指します。「毎年アクセス数が2倍ずつ増える」「業務効率化によって人件費が30%減る」といった楽観的な数字が報告資料にあげられますが、実際は違う結果に。こちらもROIロジックを成り立たせることが目的になっていることが多いです。

④ 時代遅れ

やっとの思いで完成させたシステムですが、画面も機能も技術も古くさく、使い勝手が悪い。なぜこのような事態になるのかといえば、投資の意思決定が遅いからです。ベンダー決定に時間がかかったり、要件がなかなか決まらなかったり、仕様変更や要件追加が繰り返されたことによってリリースが遅れたのです。

このように、使えないシステムが生まれてしまう原因は多岐に渡ります。

2. なぜムダになってしまうのか?

本来、業務効率を上げるために作ったシステムが、無用の長物となることがあります。なぜこのような事態に見舞われるのか?その理由を著者は、①現行業務・現行仕様に固執しすぎ、②はてしなき要件追加、③意識高すぎ・低すぎの3つをあげます。

① 現行業務・現行仕様に固執しすぎ

これは、「今のやりかたが正しい」と、現行業務に固執した結果、リリース後にさまざまな問題を発生させることです。例えば、ムダに多機能になってしまったり、ムダに密連携になったり、「バッチ処理」のラッシュになってしまったりすることです。なぜそうなるのかというと、「そもそも現行が見えていない」ことにあります。とりわけ「職人技」などはシステム化することが難しく、後になって抜けや漏れが発覚します。

② はてしなき要件追加

「この要件も追加したい」「こんな機能も欲しい」など、要件定義や意思決定に時間がかかればかかるほど、要件が膨れ上がります。とりわけ、エンドユーザー部門の組織変更があると顕著になります。前任者の否定や新しい要件を追加されると、なし崩し的に要件が増えるからです。

③ 意識高すぎ・低すぎ

「意識が高いパターン」とは、どこかのセミナーで聞きかじった最新テクノロジーを、無理やり入れようとすることです。例外業務までシステムに組み込もうとした結果、「エンジニアにしか使いこなせない」「運用者が維持管理できない」といった事態になります。逆に「意識が低いパターン」も困りものです。「よくわからないから、とりあえず今までやっていたことをシステム化する」といったチャレンジは、チームが合意したうえで行います。見切り発車で行くと、組織もエンジニア本人も成長がありません。

無用の長物になってしまうのは、どれも自分たちが蒔いた種であることが原因です。使いこなせない挙句、「俺ら、ITシロウトだから!」と開き直ってしまうことだけは、避けたいところです。

3. システムの「抜け」「漏れ」の原因

一念発起してシステムを導入したが、いざ蓋を開けてみると「抜け」や「漏れ」だらけ。一体何が原因で、この「負のスパイラル」に陥ってしまうのでしょうか?著者は例によって、6つの問題地図を広げます。

① 隠れたステークホルダーを洗い出しきれていない・本当のステークホルダーに聞いていない
② 要件を言語化しきれていない
③ 後送り体質&運用マル投げ
④ 有識者がいない
⑤ 「火吹き」の経験が生かされない
⑥ IT屋のプレゼンスが低い

ここで取り上げるのは、③後送り体質&運用マル投げ、④有識者がいない、⑥IT屋のプレゼンスが低いの3つです。

「後送り体質&運用マル投げ」

これは、「運用でカバー」してしまうことです。開発中に漏れや抜けが発覚したが、「運用でカバー」すればいいと考えてしまうと、結果、「無理ゲー」となってしまいます。エンドユーザーの手間が増えたり、運用作業項目が増えたりと、効率化を目指したシステムが逆に仕事を増やします。

「有識者がいない」

システム開発・導入プロジェクトに、業務の有識者がいないことが原因で、漏れや抜けが発生します。運用の有識者がいないと、「だろう」や「べき論」で進めてしまい、結果、空振りに終わるのです。

「IT屋のプレゼンスが低い」

「抜け」や「漏れ」が続くと、最終的に「うちのシステム部門、使えない」「だからIT担当部署はダメなんだ」といった、IT屋の地位が下がります。するとIT屋の言うことに耳を持ってくれなくなり、エンドユーザーが非協力的になってしまいます。こうして的外れで使えないシステムが生まれ、負のスパイラルに陥るのです。

このように、システム導入の「漏れ」や「抜け」は意外にも多く、起こりうるであろう問題を知っておくことが求められるのです。

まとめ

『システムの問題地図』をご紹介しました。著者は最後に、「ITの世界のマネジメントの考え方やフレームワークはすばらしい。世の中の課題を解決する武器を十分持ち合わせている」と述べています。わたしたち人間は、新しいものや未知のものに、抵抗を覚える性質があります。インターネットが誕生した当初、誰もが懐疑的なものだと感じました。しかし、現代はわたしたちの生活の基盤となり、不可欠なものとされます。これを踏まえると、新しいものや未知のものにこそ、チャレンジすることが重要なのです。

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