著者・あらすじ
永松茂久
株式会社人財育成JAPAN 代表取締役。大分県中津市生まれ。自身の経験をもとに体系化した「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で多くの講演、セミナーを実施。「人の在り方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累計動員数は延べ45万人にのぼる。
あらすじ
2020年、2021年、2年連続で「一番読まれたビジネス書」に輝いた大ベストセラー『人は話し方が9割』の続編。「聞くことの重要性」「聞き方のコツ」「嫌われないようにするには?」など、コミュニケーション上手になる方法をお届けします。
1. なぜ聞くことが重要なのか?
本書は、「聞き方」の重要性を説いた本ですが、なぜ話し方より、聞き方の方が大事なのでしょうか?それは会話において、人が求めるのは「話し上手な人」よりも、「話させ上手」な人だからです。そもそも人間は本来「話したい生き物」であり、会話を上達させる一番の近道は、他でもない「聞き方」にあります。では、「聞く力」を身につけると一体、どんな恩恵が受けられるのでしょうか?著者は、次の7つのメリットをあげています。
① 語彙力が少なくてすむ
② 聞くことは読書と同じ
③ 人の感情が読めるようになる
④ 相手を不快にさせるリスクが減る
⑤ 聞くことで自分の盲点が見えてくる
⑥ 沈黙をおそれなくてすむ
⑦ 勝手に人の評価が上がる
ここでは、「➂人の感情が読めるようになる」と「⑥沈黙をおそれなくてすむ」について触れていきます。
③ 人の感情が読めるようになる
人の話をよく聞いていると、その言葉の奥にある感情を読み取ることができます。人は「言葉」だけでは、うまく自分の気持ちを表現できません。したがって、会話を発展させたければ、言葉の奥にある感情を読み取ることが求められるのです。自分ばかり話していると、感情が読み取れないでしょう。
⑥ 沈黙をおそれなくてすむ
日本人は、会話での沈黙を怖れる傾向があります。実のところ、この沈黙は「聞き手」に回ることで、減らすことができます。そもそも沈黙のプレッシャーがかかるのは、主に「話す側」です。聞く側は、次の会話を笑顔で待っていれば、ほとんどプレッシャーを感じません。それを踏まえると、会話において有利なのは断然、聞く側だったのです。
このように、「話す力」を磨くより、「聞く力」を磨く方が、圧倒的に効率的で、多くのメリットを得られるのです。
2. コツは「相手を安心させること」
好感を持たれる人といえば、話し上手な人をイメージしますが、実はそうではありません。「聞き上手」な人の方が断然、好感を持たれます。その理由は、人は安心すれば、心を開いてくれるからです。安心することで自分の居場所を見つけ出し、「わたしはここにいて、いいんだ」と思えるようになります。
では、どうしたら人を安心させる「聞き方」ができるのでしょうか?著者は人に好かれる聞き方のキーワードとして、次の5つをあげていますが、ここでは、「うなずき」について解説します。
著者は「タイミングのいいうなずきこそが、相手の深い話を引っ張り出す」と言います。具体的には、「うなずきに強弱をつけること」です。実を言うと、うなずきは感情を表現することができ、うまく使い分ければ、相手の話にリズムをつけることができるのです。うなずきの深さを「弱・中・強」の3段階の深さでイメージします。弱は、「首を固定したままで顎を軽く下に振るうなずき」。中は「頭ごと下に持って行くうなずき」。強は「首、頭をすべて使って背中まで引っ張られるくらいの深いうなずき」です。普段は「弱」で、自分自身も大きく納得した時は、「強」で表現します。
著者がもう一つ紹介するのは、「あごひも理論」です。「あごひも理論」とは、相手が安心する聞き方をイメージするための「ワーク」です。まず、自分の顎にヒモがついているイメージをします。そして相手の脳を、引き出し付きのタンスとイメージします。自分の顎ヒモは、相手のタンスの取っ手に結び付けられています。注意したいのはこのタンスの引き出しは「自動で閉まる」ようになっており、開けては締まり、閉まってはまた開けるといった作業が必要になってきます。イメージするとわかると思いますが、大きくうなずいて強く引っ張ることで、その引き出しは大きく開きます。大きく開いた分、そのタンスの中から相手の言いたいことが飛び出してくるといった構造です。この「あごひも理論」を意識するだけで、相手の深い話を引っ張り出すことができるでしょう。
3. まずは嫌われないこと
会話において、相手を安心させることが重要と述べましたが、実は相手を安心させる前に、すべきことがあります。それが「嫌われないこと」です。本書では嫌われない聞き方を9項目あげていますが、ここでは、「答えや解決策をはじめから言わない」「干渉しすぎない」の2つを取り上げます。
「答えや解決策をはじめから言わない」
会話においてやってしまいがちなのは、「答え」や「解決策」を急ぐことです。例えば、相手が悩み事の相談をしてきたとき、多くの人は「答え」や「解決策」を提示することに死力を尽くします。しかし、相談してくる人というのは、「ただ自分の気持ちをわかってほしい」と願っていることが多く、答えや解決策を知りたいわけではありません。そこでやるべきことは、「こうすればいい」といった指示ではなく、「あなたはどうなったら嬉しい?」といった「質問」です。希望である「どうしたい?」ではなく、感情の「どうなったら嬉しい?」と質問することで、本音を聞き出すことができるのです。ポイントは相手が自分で解決策を見つけ出せるように「伴奏するような気持ち」でいることです。
「干渉しすぎない」
そもそも人間には、「誰にも言いたくないこと」が1つや2つあります。どんなに親しい間柄であっても、このブラックボックスを開けないことが、人間関係の最低条件です。例えば、「今日は何時に帰ってくるの?」「今どこにいるの?」「今日は何してたの?」「なんで私には何も言ってくれないの?」と言われた相手は、どんな気持ちになるでしょうか?余計に自分の殻に閉じこもってしまうでしょう。このような場合、効果的な返答は、「遅かったね、心配したよ。無理しないでね」「私はこうしてもらえるとうれしいな」「私で相談できることがあったら言ってね」と相手に質問するのではなく、自分の気持ちを伝えるのです。このように、大切な相手だからこそ、適度な距離を取ることが重要だったのです。
まとめ
『人は聞き方が9割』をご紹介しました。著者は最後に、「人生を作っているのは言葉である」と述べています。言葉とは不思議なもので、同じ意味の言葉でも、「言い方」一つで、相手の印象がガラリと変わってしまうことです。車のクラクションのように、上手く使えば相手にいい印象を与え、下手に使えば相手を怒らせるものになります。言葉の使い方、言葉の聞き方を身につけることが、人生を豊かにするヒントだったのです。