【Special interview】誰もが最初は新人だった。あの人の”はじめて”物語 #08 清水貴久

【Special interview】誰もが最初は新人だった。あの人の”はじめて”物語 #08 清水貴久

今や業界では雲の上の存在と思えるような成功者やその道の第一人者でも、 最初は誰もが新人であり、多くのつまずきや戸惑い、苦労を経験しています。誰だって最初からできたわけじゃない。初めから自信があったわけじゃない。 人生の様々な節目での、あの人の「新人時代」にフォーカスし、明日への勇気に繋がるヒントをお届けします。


今回のゲストは、全国600店舗のチェーンを有し、「まごころ弁当」「配食のふれ愛」を中心とする高齢者向け配食サービスを展開する株式会社シルバーライフの清水貴久社長。2017年10月に東証マザーズ上場を果たし、大きく業績を伸ばし続けています。そんな配食ビジネスのカリスマとして業界を率いる清水社長に、かつて新人時代に経験した失敗談や苦労を赤裸々に語っていただきました。ぜひじっくりとご覧ください!

誰もが最初は新人だった。あの人の”はじめて”物語

株式会社シルバーライフ 代表取締役 清水貴久さん

無駄なことは、どれだけやっても無駄!
新人時代の失態が自分を真逆に伸ばしてくれた

過酷な部活を通して、「自分がどうありたいか?」を自問自答した

 大学入学時、「ハイキングやキャンプファイヤーが楽しめるよ!」との甘い誘い文句に惹かれ、ワンダーフォーゲル部に入部しました。ところが、入ってみたら思いのほか過酷でサバイバルな部活動で……。「話が違うじゃないか!」と憤りながらも、次第に山登りの魅力に引き込まれていき、気づいたら4年間、ひたむきに活動している自分がいました。

 仲間たちと助け合いながら、幾度となく険しい登山を経験する中で気づいたことは、「人はギリギリの厳しい環境に追い詰められた時に、その人の本性が出てしまう(本質が見えてしまう)」ということでした。いとも簡単にくじけて周りの足を引っ張ってしまう人もいれば、厳しい局面でも周りに目を配って人の助けになれる人もいる。じゃあ、「自分はどうありたいか?」と考えた時、できれば後者のような人になりたいと思うようになったんです。

 大学卒業後、社会に出るにあたり、「自分は厳しい環境や局面にある人を助けるような仕事に就きたい」と思い、警察官という仕事を選びました。ここだけ聞くと、なんだか志がすごく高い人のように思えるかもしれませんが、「熱い想いだけで仕事を選ぶ」というのも、若かりし学生時代の特権みたいなものですもんね(笑)。
 実際、警察官になってみるとかなり向いていたようで、交通違反の取り締まりの点数を大幅に稼ぐなど早くから実績を上げることができました。まぁ、周りも職務に対してそんなにガツガツ取り組んでいなかったという側面もありますが……。一年半という異例の速さで刑事に抜擢されたのですが、結婚を機に民間の仕事に移ることを決意。自分にとっては人生の大きな岐路でしたが、何より大切な家族との生活を守ることを選びました。

 民間でやって行こうと決めたものの、名刺交換のやり方も知らなかったですし、ビジネスがどういう仕組みで成り立っているのかもよく分からなかったので、まずは世の中の動きを学べるような会社に行こうと経営コンサルティングの業界に的を絞りました。
 どうやら経営コンサルタントという仕事は、困っている社長さんに経営に役立つ情報やアドバイスをするという、いわゆる「人助け」の仕事だと聞いていたので、それも魅力の一つでした。この業界なら自分の望む経験が積めるだろうと勢い勇んで飛び込んでみたら、想像以上の戸惑いと苦労が待っていました。

がむしゃらに頑張ったら結果が出る――わけじゃなかった!

 入社して担当した仕事は、「飲食店のフランチャイズを促進する」というものでした。具体的には中小企業の経営者にアプローチをして、新たな事業の柱として飲食店のフランチャイズに加盟していただくという営業の仕事になります。
 わずか入社2、3カ月の新人コンサルタントが、いきなり百戦錬磨の社長さんのところに行って事業の提案するのはあまりに無謀でしたが、なんとか業界やビジネスの知識を叩きこんで挑む毎日でした。

 入ってみてまず驚いたのが、周りの同僚や先輩たちが皆、仕事への情熱に溢れ、実績を上げるためにやる気に満ちていたことです。これはある意味、カルチャーショックを受けましたね。
 そして前職の仕事では、がむしゃらに取り組めば必ず結果が出ていたのが、お客さまを相手にする営業の仕事ではそうはいかない、という壁にぶち当たりました。ただ手数(てかず)を増やして頑張ればいいというスタンスでは通用しなかったのです。

 お客さまに事業の提案をするには、相手の企業の経営事情やウィークポイントもしっかり把握しなければいけませんし、経営者のビジョンやパーソナリティも理解した上で話を進めないといけません。戦略を考えてアプローチしていかないと成果に繋がらないわけです。
 今思えば当たり前のことなんですが、当時の自分にとっては思考もやり方もそれまでとは全く違うものだったので、大きく戸惑うところでありました。
 どれだけ頭を絞っても、天性の営業センスを持つ人には叶うわけもなく……。一時期はもう何でもやれることはやってみようと、飛び込み営業をしてみたり、チラシをまいてみたり、無駄だなと思うこともあれこれ試したりしました。

 週1回、報告会議がありまして、アポイントの件数や次のステップに進んだ企業の件数、契約件数をそれぞれ報告するのですが、まずアポが取れていないと問い詰められてしまうので、会議までに無理やりアポイントを取る、なんていうこともやりました。
 ある時は、相手の会社に「取材です!」と言ってアポを取ってみたり、広告代理店の会社には「御社に広告を頼みたくて!」と言って時間を取ってもらったり。実際に会ってみたら、取材でも仕事の依頼でもなく、営業をされるわけですから、相手も寝耳の水です(笑)。当然、うまくいくわけもなく、自分でもホントに馬鹿げているなぁと思いつつも、成果が出ない時はこうして必死に取り繕っていたのです。

 一年半ほど試行錯誤しながらも、なんとか食らいついてそれなりの結果は出しましたが、お給料に見合うような実績は出せず……。
 でも、ここでの悔しい体験や学びが、その後の自分の働き方、あり方を真っ向から変えることになったのです。

「結果に結びつくにはどうしたらいいか?」を最優先に

 会社に成果を報告するために、不自然なやり方で強引にアポの件数を増やしてみたり、なんの戦略もなく手当たり次第、アタックしてみたり。無駄な動きも相当してきましたが、やっぱり「無駄なことはどれだけやっても無駄なんだ!」という、あまりにもシンプルな真理に気づきました。
 結果に結びつかないことはいくらやっても無駄は無駄、自分が消耗するだけなのです。

 それからは、「結果に結びつくにはどうしたらいいか?」を最優先に考えるようになりましたし、もし自分が会社を作るようなことがあったら、「従業員に無駄なことをさせないようにしよう」と心に誓いました。どうしても会議での締めつけが厳しかったり、上司からの圧力が強かったりすると、部下は表面上、成果を出しているように取り繕ったり、失敗をごまかしたりしてしまいます。そういう見せかけだけ整えるような風土は作りたくない、働く人にとって“実りのある”風土を作りたいと思うようになったんです。

 そんな矢先、業務の中で「高齢者向けの配食サービス」という業界があることを知りました。毎日の食事に困っている高齢者の方に食事を届けるのが主なサービスになるのですが、まだ出来て間もない業界で食材の作り込みや物流、販売促進など、まだまだ発展途上にあることが分かりました。
 それでも、売り上げだけはぐんぐん伸びている。これはマーケットそのものが強いのだと感じ、「ある程度コンサルタントとして鍛えられた自分がこの業界で働いたらどんな結果が生まれるだろう?」という想いと、「困っている人たちの助けになりたい」という想いが合わさって、配食サービスの世界に入ることに決めました。

 当時、この業界の先駆けとしてフランチャイズを展開していたフランチャイズ本部に加盟し、会社を設立して出店しました。

 その時はもう、「無駄なやり方はしない! 最小限の労力で最大の成果を発揮しよう!」と心に決めていましたから、どういう動きをすれば一番売り上げに繋がるのかを分析しながら販売していきました。
 たとえば、お客さまにお弁当の試食をしてもらう“アポイントを取る”ことが成約を獲得する上で大切になるのですが、それをゴールとして設定した場合、事前の資料なしにいきなり飛び込みで行くとアポが取れる率が15%ぐらい。事前にチラシやDMを出しておくと飛び込みで行ったとしてもアポが取れる率が30~40%に上がる。というように、どういう動きをしたら、どういう結果が出るのかを数字で明確に表すようにしたんですね。

 営業職の方なら、皆さんやっていることかもしれませんが、そうした基本的な営業手法や分析をしながら、販売のノウハウを一つひとつ積み上げていきました。もちろん、私自身もバイクに乗り、雨の日も風の日もお弁当の配達や営業に勤しみました。地域の高齢者の方々に毎日お弁当を届ける中で感じる宅配スタッフの苦労であったり、やりがいなども身に染みて感じていたので、働き方や給与体系などにも工夫を施したりしました。
 そんな積み重ねがようやく実を結び、全国300店舗あるうち、売り上げナンバー1と2のお店を作ることができました。

 ただ、私としては「当たり前のことを当たり前にやってきた」という意識しかないんですけどね。仕事で結果を生み出すのに“魔法はない”のだと、今なら断言できます。
 こうして結果やゴールをしっかりと意識しながら働くあり方を築けたのも、あの新人時代の恥ずかしい失態や失敗があったおかげだとつくづく感じています。

転職するなら「勝ちやすい業界かどうか?」も大事なポイント

 その後、フランチャイズの本部と契約についての行き違いがあり、対応ややり方に納得が行かなかったため辞めることに。うちの会社で以前アルバイトとして働いていた教え子が独立して、配食サービスの会社を設立していたので、そこでフランチャイズ募集の担当として働くことになりました。
 
 その会社が今、私が経営しているシルバーライフです。当時はまだ店舗数は少なかったのですが、フランチャイズがどんどん広がって100店舗を超えたあたりから、社長である教え子からこう告げられました。
「清水さん、僕は自分の目の届く範囲で楽しく店舗運営をしていきたかったけど、正直、この先どこまで広がっていくのか怖い。社長を代わってほしい」と。こうした経緯もあり、私が社長を引き継ぐことになったのです。

 今後、高齢化や高齢者の独居世帯の増加に伴い、配食サービスの市場は今の数倍、数十倍に伸びていくことが予想されます。ただ、大手が後々参入することを考えると、これからはいいものを安く提供できる製造と物流の仕組みをいち早く備えた会社が生き残るだろうと考えています。
 昨年、上場を果たしたのは、そうした自社工場設立などの設備投資のためでもありました。これからも未来をしっかりと見据えて、社会から求め続けられる経営を目指していきたいですね。

 今、就職、転職を考えていらっしゃる方も多いと思いますが、もしやりたいことが決まっていないのであれば、まずは「勝ちやすい業界かどうか?」をポイントに選んでみるのも一考かと思います。
 もし私がもう少し若くて転職を考えるなら、これから先、国内で伸びていく環境にある会社か、海外にモノを高く売れる会社を選ぶでしょう。
 勢いのある、伸びている業界・会社で働いてみると、若いうちから様々な経験ができて面白いですし、何より地道な努力が報われやすいと思います。どこに身を置くかで人生は大きく変わってくるものなので、ぜひ色々な観点から仕事選びをしてみてほしいですね。

清水貴久さんの新人時代
「厳しい環境や局面にある人を助けられる人になりたい」と、大学卒業後は警視庁に。警察官の仕事は好きでやりがいも感じていたが、今思えばあの時、人生の岐路で別の道を選んでよかったと語る。多くの高齢者の生活を支える配食サービスの仕事は、当時に想い描いた夢とは異なるが、「困っている人を助ける」という意味では変わりはない。また別の形で大きく花開いた。
取材・文/伯耆原良子
撮影/清水聖子
▼清水貴久さんプロフィール 1974年生まれ。東京都出身。大学卒業後、警視庁に入庁。その後、経営コンサルティング会社のベンチャー・リンクで経験を積み、2002年に高齢者向け配食サービスのフランチャイズに加盟。全国300店舗あるうち、売り上げナンバー1、2の販売店を築く。2009年に株式会社シルバーライフにFC開発部長として入社し、2012年に代表取締役に就任。全国600店舗を有する日本一の店舗網に押し上げ、2017年に東証マザーズ上場を果たす。高齢者向け配食ビジネスのカリスマとして、新たな取り組みにチャレンジし続ける。
株式会社シルバーライフ
2007年設立。高齢者向けの配食サービスを展開している。2009年にはフランチャイズ展開をスタートし、現在店舗数は「まごころ弁当」と「配食のふれ愛」を合わせて全国600店舗と業界ナンバーワンを誇る。2017年10月には東証マザーズへ上場し、確実に成長を遂げている。社内独立制度も充実しており、働きやすい仕組みや環境が整備されているところも魅力的な企業。

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