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【調査報告】3月8日は国際女性デー 職場の「ジェンダーハラスメント」の実態について “ジェンハラ”被害経験者は27.6% 47.8%が男女格差のある職場で働いている実態が浮き彫りに 「お茶くみ・掃除は女性の仕事」「男は力仕事」など 性別による業務分担意識が根強く残る

総合転職エージェントの株式会社ワークポート(所在地:東京都品川区、代表取締役社長 CEO:田村高広)は全国のビジネスパーソン446人(20代~40代・男女)を対象に、職場の「ジェンダーハラスメント」の実態に関するアンケート調査を実施しました。

■【職場の男女格差】「職場は男女平等ではない」が47.8%  性別による業務分担が根強く残ることが背景か
 2022年7月に女性活躍推進法の省令改正で企業に男女賃金格差の開示を義務付けられるなど、男女格差の是正に向けた取り組みが推進されています。3月8日の国際女性デーに際し、職場の男女格差の状況を知るために「ジェンダーハラスメント」の実態について調査しました。

 はじめに、対象者全員に現在の勤務先(または直近の勤務先)は、男女平等だと感じるかどうか聞いたところ、「まったく男女平等だとは思わない」とした人が16.6%、「あまり男女平等だとは思わない」とした人が31.2%という結果となり、47.8%の人が男女平等だと思える職場で働いていないという実態が浮き彫りになりました。

 「男女平等だと思わない」理由としては、おもに性別による仕事内容の区別や差別があるという意見や、女性は管理職になりにくいという意見が大半を占めました。

▼男女平等だと思わない理由(【女性】が不利だという意見)(一部抜粋)
「男性の仕事、女性の仕事と完全に区分けされているから」(40代・男性・システムエンジニア)
「女性社員はアシスタント的な仕事が多いから」(20代・女性・システムエンジニア)
「お茶くみや掃除を女性のみにさせる風習があるから」(30代・女性・事務)
「女性の管理職が少なく、また女性の登用機会が与えられていないと感じるから」(30代・男性・コールセンター)
「同じ趣旨の意見でも男性の発言が通りやすく、男のほうが賢いというジェンダーバイアスを感じるから」(30代・女性・事務)
「悪気なく事務的な作業は女性にさせればよいと言う人がいるから」(40代・男性・機械系エンジニア)
「同じ勤務年数や学歴でも給与額が男女でかなり差がある(女性の給与が低い)から」(30代・女性・事務)  …など

 半数弱の企業は性別による役割分業意識が根強く残っており、特に女性であるからこそ与えられる仕事や役割が制限されているため、キャリアアップしにくいという現状があることが浮き彫りになりました。その結果、給与面にも差が出ているというケースもあるようです。
 上記のような内容のほかにも、「女性事務職にだけ制服があるから」(40代・女性・管理)、「バレンタイン(チョコを配ること)を強要されているから」(40代・女性・倉庫業務)、「妊娠中と出産後にパートに降格を勧められたから」(40代・女性・事務)、などの明らかな性差別を指摘する意見や、中には「女性に役職は与えられない。三十歳すぎたら女は定年だと言われたから」(30代・女性・事務)や、「お客さんからは(全員ではないものの)性的なサービスを求められる事があったから」(30代・女性・清掃業)などという、明らかなセクハラがあったとする過激な意見も挙がり、女性軽視の風潮が残ってしまっている企業があることもわかりました。
 一方で、「男性より女性に対して配慮が多いから」(30代・男性・営業)、「女性対象の過剰な待遇が目立つから」(40代・男性・マーケティング)という意見も散見され、極端な女性活躍推進から男女の不平等を感じている人もいることがわかりました。
男性・女性間で不均衡を起こすことなく、男女平等を推進するには一定の課題がありそうです。

▼男女平等だと思わない理由(【男性】が不利だという意見)(一部抜粋)
「女性の管理職登用を積極的に推し進めていて、非常に良いことではあると認識しているものの、逆に男性のキャリアアップについては不利に感じているから」(30代・男性・営業)
「女性躍進をすすめるあまり、女性であることが優位に働いている気がするから」(40代・女性・事務)
「女性は優遇され、男性社員は罵倒され数字を残しても何も残らないから」(30代・男性・接客販売)
「セクハラ対策や女性登用と銘打ち、男性の意見は聞き入れられず、昇進も女性優位だから」(40代・男性・その他)
「男性は育休や時短勤務の利用がしづらいから」(30代・女性・営業)
「男性に残業をさせるから」(40代・女性・クリエイター)  …など

■【職場のジェンダーハラスメント】27.6%がジェンダーハラスメントの被害経験あり
 次に、対象者全員に、現在の勤務先(または直近の勤務先)で、ジェンダーハラスメントを受けたことがあるか聞いたところ、27.6%が「被害を受けたことがある」と回答しました。
 冒頭に記載した調査結果にて、勤務先で男女不平等を感じるとした人が半数弱いることがわかりましたが、その要因が「ジェンダーハラスメント」に該当していると思われるケースは約3割近くあるといえそうです。

■【ジェンダーハラスメントの加害者】84.6%が「上司」 固定観念から女性らしさ・男性らしさの強要か
 また、ジェンダーハラスメントを受けたと回答した人に「誰から」ハラスメントを受けたか聞いたところ、「上司」と回答した人が84.6%と大多数を占めました。部下に指示や指導をするうえで、「ジェンダーハラスメント」と捉えられるような行動や発言をしてしまっている可能性があると考えられます。

 具体的に、どんなジェンダーハラスメントを受けたか聞いたところ、男女不平等を感じる理由にも上がっていたような性別による役割分業をされているという意見のほか、「女性らしさ」、「男性らしさ」を強要されるという意見が多数挙がりました。ほかにも、働き方の差別やキャリアアップや昇進面で不当な扱いを受けたという意見もありました。

▼女性に対するジェンダーハラスメント(一部抜粋)
「スカート、ワンピースなど女性らしい服装を心がけるように言われた」(30代・女性・その他)
「女性だから男性を立てるようにと指導された」(40代・女性・その他)
「女なのにこのポジションは贅沢、女だから化粧しろ、妊娠したら昇格候補から外すと言われた」(30代・女性・営業)
「営業成績が良いと、女性だからどんな手を使ったのかと聞かれた」(30代・女性・事務)
「女性がお茶だし、電話受付、掃除はやるように言われた」(40代・女性・管理) 
「彼氏がいるんだからとっとと結婚して辞めろと女性の先輩から言われた」(40代・女性・事務)
「社歴や業績がほぼ同等の男性はほぼ役職がついたが女性は平社員のままだった」(40代・女性・製造)
「重いものを運ぶのを手伝おうとした時、女は引っ込んでいろと言われた」(20代・女性・管理)  …など

▼男性に対するジェンダーハラスメント(一部抜粋)
「男性は転居を伴う異動有りで女性は転居を伴う異動無し」(30代・男性・営業)
「男性は残業を強要される」(40代・男性・管理)
「男なのになんでこれができないんだ、女らしくて気持ち悪いとの発言」(20代・男性・製造)
「男だから泣き言を言わず働けと言われた」(20代・男性・建築土木)
「男だからやれるだろうと仕事を振られ、無茶を強いられた」(30代・男性・製造)
「男性で身体が大きいのでスポーツイベント(綱引き)への強制参加」(30代・男性・製造)
「男性だから重いものを運ぶ、車を運転するなどの指示」(40代・男性・管理) 
「来客のお茶だしを対応したら女性の仕事だと注意を受けた」(30代・男性・クリエイター)  …など

■【ジェンダーハラスメント被害への対処】48.8%が相談できず泣き寝入り 40.7%が転職を検討
 続いて、ジェンダーハラスメントを受けたことがあると回答した人に被害に遭った際にどうしたか聞いたところ、48.8%が「誰にも相談せずに我慢した」と回答しました。「上司」からジェンダーハラスメントを受けた人が84.6%に上ったことからも、パワーバランスを理由に泣き寝入りせざるをえなかった人も多いことがうかがえます。実際に、「上司に相談した」と回答した人はわずか6.5%でした。また、「職場の相談窓口(部署)に相談した」は8.1%、「同僚に相談した」は19.5%に留まり、社内には相談しにくいと感じている人は少なくないようです。
 また、「誰にも相談せず我慢」に次いで、「転職・退職を考えた(転職・退職した)」と回答した人は40.7%に上り、ジェンダーハラスメントは働き手の長期就業意欲にも影を落とすこともわかりました。

■【ジェンダーハラスメントの相談窓口】設置率41.9%に対し51.9%が利用しにくい 秘匿性が守られず不安
 ジェンダーハラスメントの被害に遭った際の対処として、「職場の相談窓口(部署)に相談した」は8.1%に留まりましたが、実際にはどれぐらいの企業に相談窓口があるのでしょうか。対象者全員に、現在の勤務先(または直近の勤務先)には、ジェンダーハラスメントを相談できる窓口はあるか聞いたところ、41.9%が「ある」と回答しました。「わからない」と回答した人も22.9%を占め、認知には差があることがうかがえました。

 さらに、「職場に相談窓口がある」と回答した人に相談窓口が社員に周知されているか聞いたところ、「周知されていない」と回答した人は18.7%でした。少数ではあるものの、「まったく周知されていない」と回答した人も3.2%おり、ジェンダーハラスメント被害に遭った際、相談窓口があることを知らずに泣き寝入りした人もいる可能性があると思われます。

 最後に、「職場に相談窓口がある」と回答した人に相談窓口は利用しやすいかどうか聞いたところ、半数を超える51.9%が「利用しにくい」と回答しました。中でも、「かなり利用しにくい」と回答した人は18.7%に上り、窓口があっても周知されず、利用も敬遠されている企業があるという実態が浮き彫りになりました。

 「利用しにくい」と回答した人に理由を聞いたところ、「利用方法がそもそもよくわからないから」(40代・男性・営業)、「窓口のある場所がわからないから」(40代・男性・企画マーケティング)など、そもそも周知されていないので使うには不安という意見のほかに、「担当者の口が軽く、守秘義務が守られないから」(30代・女性・事務)など通報者が守られないという意見が多数挙がりました。実際に、「相談者はなぜか特定され、噂になるから」(30代・女性・製造)など情報漏洩が起こった事例もあり、秘匿性の低さから敬遠されていることがわかりました。ほかにも、「秘密厳守と言いながら、最終的に上司に伝わるため」(20代・男性・営業)、「話は聞いてくれるが解決には至らないから」(20代・女性・事務)など、相談窓口があっても根本的な解決ができないと嘆く人もいました。さらに、「相談窓口担当者がハラスメントをしていたから」(30代・女性・営業)など、そもそも相談窓口自体が形骸化しているという意見も見られました。

▼相談窓口が利用しにくい理由(一部抜粋)
「利用者が少なく、相談の実態が見えないため」(40代・男性・機械系エンジニア)
「誰が相談したのか、当事者が特定されるから」(30代・女性・管理)
「窓口の最終決定者である常務がパワハラ・セクハラの常習者で、相談窓口として機能していないから」(40代・女性・管理)    
「上部に連絡がいくと思うので、仕事がやりづらいから」(40代・女性・企画マーケティング)  …など

 2022年版「男女格差(ジェンダーギャップ)報告」(世界経済フォーラム)によると、日本は調査対象の146カ国中116位を記録するなど、まだまだ男女格差が大きいと評価されています。今回の結果からも、まだまだ日本の企業の中に「女性らしさ」「男性らしさ」を求める価値観(特に女性を軽視する考え方)や性別で区別する考え方が根強く残っており、それがジェンダーハラスメントを生み出しているということがわかりました。ただ、染み付いた価値観を変化させるには一定の時間がかかります。まずは、安心して相談できる窓口や制度の整備など、早急に対応できることを丁寧に実施していくことで、世界との差を縮めていくことができるのではないでしょうか。

■調査概要
調査内容 :職場のジェンダーハラスメントの実態について
調査機関 :自社調査
調査対象 :当社を利用している全国のビジネスパーソン(20代~40代・男女)
有効回答 :446人
調査期間 :2023年2月14日~2月21日
調査方法 :インターネット調査
※データは小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。

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