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【調査報告】現役ビジネスパーソンに聞いた! 「セクシャルハラスメントの実態」について セクハラ被害に遭ったことがある人は24.9% うち7割が「キャリア形成に支障をきたした」と回答 上司からのセクハラ事例が多く57.1%が「転職の原因に」 44.6%は「誰にも相談せず我慢」

総合転職エージェントの株式会社ワークポート(所在地:東京都品川区、代表取締役社長:林 徹郎)は全国のビジネスパーソン486人(20代~40代・男女)を対象に、「セクシャルハラスメントの実態」についてアンケート調査を実施しました。

■【セクハラ被害の経験】24.9%がこれまでに職場でセクハラを受けたことが「ある」と回答
 このところ、業界を問わず過去のセクハラ被害を告発したというニュースを耳にすることが増えています。職場におけるセクハラ防止対策は2019年の法改正により強化されましたが、実際にはどれくらいのビジネスパーソンが職場においてセクハラ被害に遭っているのか、セクハラ問題はキャリア形成にどれくらい影響を与えているのか、実態を調査しました。

 はじめに、対象者全員にこれまでにセクハラを受けたことがあるか聞いたところ、「ある」と答えた人は24.9%でした。被害経験者は全体の3割以下に留まったものの、セクハラ問題の根絶には至っていないことがわかりました。

■【セクハラ被害の実態】男性上司からのセクハラが76.0%と圧倒的多数 同性間でのセクハラも
 職場でセクハラを受けたことがあると回答した人に、誰からセクハラを受けたか聞いたところ、「上司(男性)」が76.0%で最多となりました。次いで、「同僚(男性)」が25.6%、「取引先・顧客(男性)」が24.8%と、どちらも30%近くにのぼる結果となりました。

 ちなみに、前出の回答を男女別に集計したところ、男性の回答でも「上司(男性)」(73.7%)や「同僚(男性)」(21.1%)が上位に入るなど、同性からセクハラを受けたことがある人も少なくないことがわかりました。

■【セクハラ被害の内容】性的言動や装飾物で就業環境を害す「環境型」が最多 社内や飲み会での事例多数
 次に、セクハラの種類を「対価型」「環境型」「制裁型」「妄想型」の4タイプ(※)に分類し、前出の質問の回答者にどんなセクハラを受けたか聞いたところ、「環境型」が47.1%と最も多く、「制裁型」もほぼ同数の45.5%でした。

※セクハラの種類
対価型セクハラ:何らかの措置を優遇する対価として性的な行為を求めるケース
(例:昇給させる代わりに性的な行為を求める、食事の誘いを断った社員を降格させるなど)

環境型セクハラ:職場での性的な言動や装飾物の設置をするケース
(例:性的な噂話を流す、アダルト系ポスターを掲示するなど)

制裁型セクハラ:異性に対して圧力をかけるような態度を取るケース
(例:女性社員の発言を無視して男性の指示にだけ従う、「女性は育児に専念したいだろう」と発言するなど)

妄想型セクハラ:相手が自分に好意があると勝手に決め付け、それに基づいた行動をするケース
(例:両思いだと思い込みしつこく食事に誘う、交際中の体で大量にメッセージを送るなど)


 具体的には誰からどんな場面でセクハラを受けたか聞いたところ、男性上司から業務中や飲み会でセクハラを受けたという意見がとくに多く寄せられました。内容としては、口頭でのセクハラや不必要な身体への接触などが中心となりました。また、結婚・生理・妊娠などに関するセクハラ発言の事例も多々挙がりました。

▼セクハラの被害事例(一部抜粋)
・対価型セクハラ
「仕事だと呼び出され、行ったらプライベートの食事で交際を迫られた。次に断ったら、仕事に不真面目だと叱責された」(40代・女性・クリエイター)
「上司(男性)が飲み会に参加することをほぼ強要。参加しなかったら冷たくされ、仕事から干される」(40代・女性・コールセンター)
「顧客(男性)から購入時に性的な内容の発言をされた」(20代・女性・接客販売)
「同性のお客様から関係を要求された」(40代・男性・営業)

・環境型セクハラ
「皆がいる前で上司(男性)から“風俗で働いていそう”と発言される」(30代・女性・事務)
「上司(男性)から飲み会後に抱きしめられたり、“ブラウスの中は何を着ているの?”と聞かれたりした」(30代・女性・事務)
「上司(男性)や同僚(男性)から下品な話を頻繁に聞かされた」(40代・男性・管理)
「未婚であることについて、上司からゲイだと皆の前で言われ笑われた」(40代・男性・営業)

・制裁型セクハラ
「上司(男性)から、“女性の育成は会社の損失、子供を産んだら辞めるように”と言われた」(30代・女性・企画マーケティング)
「生理痛で欠勤した際、上司(男性)から生理事情について細かく尋問され、2時間半ほど別室で説教された」(20代・女性・事務)
「上司(男性)からすれ違いざまにお尻などを触られた。男性社員の話しか聞かず、女は早く子供を産んだ方が楽だと言われた」(30代・女性・コールセンター)
「性別で指示が違う。有給申請も女性は申請無しでOKだが、男性は申請と許可が必要」(40代・男性・企画マーケティング)

・妄想型セクハラ
「同僚(男性)から一方的に好意を抱かれ、執拗に食事に誘われたりキスを迫られたりした」(30代・女性・事務)
「上司(男性)の車での迎えを断ったが来られ、車内で無理やりハグしようとしてきたので避けたら頭を撫でられた。“ハグさせろよぉ~”といった内容や、名前をちゃん付けや呼び捨てで呼ぶメッセージが届いた」(40代・女性・企画マーケティング)
「2人だけになったときに“お前、俺のこと好きだろ”と言いながら抱きついてきた」(20代・女性・その他)
「同僚(女性)に退勤時に跡をつけられた。嫌がってもしつこく話し掛けられた」(30代・男性・管理) …など

■【セクハラへの対応】「誰にも相談せず我慢した」が44.6% 泣き寝入りする人が最も多い結果に
 続いて、職場でセクハラを受けたことがあると回答した人に、セクハラを受けたときにどうしたか聞いたところ、「誰にも相談せず我慢した」が44.6%で最も多い結果となりました。次いで、「上司に相談」が32.2%、「同僚に相談」が28.1%でした。

■【セクハラ対処後の状況】上司や同僚に相談するなどの対処をしても「解決しなかった」人が約半数
 さらに、セクハラを受けたとき前出のような対処をとった結果どうなったか聞いたところ、43.0%が「解決しなかった」と回答し、「解決した」と答えた人は25.6%でした。前出の回答では、上司や同僚を頼った人もそれぞれ約30%いることや職場の相談窓口を利用した人も一定数いることがわかっていますが、結果として解決には至らなかった人が約半数におよび、解決した人は3割にも満たないという状況が明らかになりました。

 セクハラへの対処をしても解決しなかったと回答した人に理由を聞いたところ、「会社が問題視しなかったため」(30代・女性・企画マーケティング)、「対策がとられなかったから」(40代・男性・その他)など、相談をしても改善につながる対応がとられなかったという意見が多く挙がりました。また、「解決をはかるための部署や担当がいなかったため」(40代・女性・その他)、「言った本人の立場が悪くなるだけで、意味がなかったため」(40代・女性・公務員)など、そもそも職場においてセクハラ被害を相談できる体制がきちんと整備されていなかったというケースも少なくないようでした。

▼セクハラ対処後に解決しなかった理由(一部抜粋)
「好かれているんだよと相手にされなかったため」(30代・女性・品質管理)
「社内に理解する雰囲気がなかったため」(40代・女性・その他)
「会社に相談窓口がなく、相談しやすい上司もいない状況で、退職以外の選択肢がなかったため」(30代・女性・事務)
「相手が女性で、男はそれくらい我慢するべきとの風潮が強くお咎めなしとなったため」(30代・男性・設備管理)
「相手が上層部だったので、なかったことにされたため」(20代・女性・企画マーケティング) …など

■【セクハラ被害による転職】セクハラ被害で「転職を検討・決意」57.1% キャリアを狂わすセクハラ問題
 職場でセクハラを受けたことがあるとする人に、セクハラが理由で転職した経験はあるか聞いたところ、「転職した」(27.3%)、「転職を検討した/検討中」(29.8%)が合わせて57.1%でした。被害経験を持つ人のうち半数以上にとって、セクハラが転職を検討するきっかけや決意した理由となったことがわかりました。

 ちなみに、弊社の転職相談サービスのカウンセリングの中でも、求職者様より転職やキャリアの悩みとしてセクハラ被害の相談を受けることがあります。今回弊社の転職コンシェルジュ(キャリアアドバイザー)180名を対象に調査をしたところ、セクハラ被害の相談を受けたことがある者は44.4%と半数近くにのぼりました。実際に寄せられた内容としては、業務中や会食・飲み会などの場でのセクハラ発言や行為などが横行している、業務とは関係ないところで上司や顧客から個人的な誘いや関係を結ぶことを執拗に迫られるなどの相談が多く、不快感をあらわにすると仕事を振られなくなったり、会社に相談しても取り合ってもらえなかったりしたことに絶望して転職を決意したなどのケースがありました。さらには、度重なるセクハラ行為に対するストレスで適応障害を発症し休業を余儀なくされたケースや、トラウマやフラッシュバックに悩まされて業務に支障が出ているというような深刻な相談を受けることもあったことがわかりました。

▼過去に転職相談で寄せられた被害事例
・上司から資料を手渡す際にわざわざ手を触られるなどの不必要な身体接触があり、生理的な限界を感じて転職を検討
・飲み会の場で上司からの女性蔑視発言やセクハラ発言が多発しており、耐えられなくなった
・OJTの段階からお酒を強要されたり、身体を触られたりしたことで適応障害を発症し、転職するしかない状況に陥った
・上司から愛人にならないかと言われ断ったところ、何かにつけて怒鳴られるようになり退職を決意した
・上司から体を触れられるなどの被害を受け、何をされるか分からず怖かったため会社にも相談できず退職した
・男性上司から体の関係を強要され、拒否したところ仕事を振ってもらえなくなり、人事部長に相談するも「黙って大人の対応をしなさい」と取り合ってもらえず退職
・職場の男性から突然抱きつかれたり待ち伏せされたりしたため会社に相談したところ、自身が退職勧奨をされた …など

■【セクハラのキャリアへの影響】7割近くが「セクハラがキャリア形成に支障をきたした」と回答
 また、職場でセクハラを受けたことがあるとする人に、セクハラは自身のキャリア形成に支障をきたしたと思うか聞いたところ、「かなりそう思う」(44.6%)、「ややそう思う」(24.8%)が合わせて69.4%でした。被害経験者の約7割が悪影響を実感しているようです。セクハラが働き手のキャリア形成に大きな支障をきたしている状況が浮き彫りとなりました。

■【職場でのセクハラ状況】職場でのセクハラを見聞きしたことが「ある」人は45.8%と半数近く
 次に、セクハラの被害経験はないとした365人に、これまで職場でセクハラを見たり聞いたりしたことはあるか聞いたところ、45.8%の人が「ある」と回答しました。自身がセクハラ被害に遭ったことのない人でも、そのうち約半数は職場でセクハラを見聞きした経験を持っていることがわかりました。

■【セクハラ認知後の対応】見聞きしたセクハラを相談した人は3割 「他人事」と感じ行動しない人が多数
 職場でセクハラを見聞きしたことがあると回答した人に、見聞きしたセクハラを誰かに相談したか聞いたところ、「相談した」とする人は32.9%でした。職場でセクハラを見聞きしても、自分で行動を起こすことはしない・あるいはできないという人が多い傾向が読み取れました。

 ちなみに、見聞きしたセクハラを誰に相談したか聞いたところ(複数回答可)、「上司」が67.3%で最多でした。次いで「同僚」(38.2%)、「職場の相談窓口」(32.7%)、「家族・友人」(10.9%)、「その他」(5.5%)の順となりました。
 一方、誰にも相談しなかったと回答した人に理由を聞いたところ、「自分に直接関係なかったため」(40代・男性・建築土木)、「当事者がどう受け止めているのか判断しかねたため」(40代・女性・企画マーケティング)など、当事者でないことや当事者の意志が判断できなかったことが要因であるケースが多いことがわかりました。また、「相談する相手や相談先がなかったため」(40代・男性・管理)、「会社にセクハラの概念がないため」(40代・男性・製造)といった相談できる環境がないとする意見も多く挙がりました。さらに、「相談する必要があるほどの内容でないと思ったから」(30代・男性・運輸交通)、「冗談程度だと思って見ていたから」(40代・男性・営業)など、問題を重く受け止めていなかったという意見も少なくありませんでした。

▼セクハラ認知後に相談しなかった理由(一部抜粋)
「受けた本人が告発しなければならない問題だから」(30代・男性・営業)
「加害者が上司であり怖かったため」(30代・男性・システムエンジニア)
「セクハラが、もはや公然だったため」(40代・男性・コンサルタント)
「飲み会の場で一時的なものだったため」(30代・男性・管理)
「関わりたくないから」(30代・男性・その他) …など

■【職場のセクハラ防止策】約半数が職場でセクハラ防止の取り組みがあると回答 相談窓口や社内研修など
 続いて、対象者全員に勤務先(または直近の勤務先)でセクハラ防止に関する取り組みが行われているか聞いたところ、「行われている」と回答した人は49.0%と約半数を占めました。

 具体的な取り組みとしては(複数回答可)、「相談窓口の設置」(81.9%)、「社内研修の実施」(70.6%)、「定期的な社内アンケートの実施」(29.8%)、「社外研修の実施」(6.3%)、「その他」(4.6%)という結果となりました。ちなみにその他の意見では、「ポスターなどの掲示」「懲戒処分の厳罰化」「社長との面談」などが挙がりました。ただし、一部からは「形だけで何も機能していない」「環境整備が不十分」など、職場の取り組みには効果がないとする声も挙がりました。

■【セクハラ防止策の希望】約7割がセクハラ防止の取り組み実施を希望 相談窓口や教育を求める意見
 最後に、直近の職場でセクハラ防止の取り組みがない、もしくはわからないと回答した人に、セクハラ防止に関する取り組みの実施を希望するか聞いたところ、約7割にのぼる68.1%の人が「希望する」と回答しました。

 具体的にどんな対策をしてほしいか聞いたところ、「個別面談や匿名での調査」(30代・女性・コールセンター)、「相談窓口の開設やヒアリング、セクハラした社員への処罰」(40代・女性・クリエイター)といった、公平な相談の窓口・機会、適切な調査・処罰などを求める意見が多く挙がりました。また「ハラスメントを理解してほしい、自覚してほしい」(20代・女性・その他)、「加害者が無意識のセクハラに気づける仕組み」(40代・男性・営業)など、セクハラについての認識や理解を深めるための教育や周知活動を求める意見も多数寄せられました。

▼職場に求めるセクハラ防止の取り組み(一部抜粋)
「訴えを公平に聞き取りして対応してくれる部署や仕組みを作ってほしい」(40代・女性・営業)
「どんなに偉い立場でもセクハラをすれば罰せられるようにしてほしい」(40代・男性・管理)
「これはハラスメントではないと思い込んでいるケースがあるため、講習で具体的な事例を紹介してほしい」(40代・女性・その他)
「何がセクハラかの線引きが曖昧なことで上層部は発言しづらくなっていると感じるため、各々の認識や禁止される発言など決まったルールを定めてほしい」(20代・男性・営業)
「社内のみの機関ではなくて第三者からの監視が必要」(30代・男性・営業) …など


 職場におけるセクハラの被害経験者は全体の3割弱という結果ではあったものの、セクハラが根絶すべきものであるという観点からすると、決して少ない数ではありません。そのうえ、被害経験者の7割にとってキャリア形成の妨げになったとあれば、見過ごしてよいものではないでしょう。実際に被害に遭った人は、誰にも相談できず泣き寝入りしているケースが多いですが、勇気を出して相談したにも関わらず会社に取り合ってもらうことができなかったために不本意な退職や転職を余儀なくされた人も少なくないという実情を重く受け止める必要があるといえます。一方で被害を受けたことがない人の意見からは、セクハラの捉え方には個人差があるため第三者が介入することが難しいという側面もあることがわかり、根絶することの難しさも露呈しました。企業にはますます、被害者・目撃者が立場を脅かされることなく相談でき、適切な対応がなされる体制づくりなど、形だけにならない取り組みが求められていくのではないでしょうか。

■調査概要
調査内容 :セクシャルハラスメントの実態について
調査機関 :自社調査
調査対象 :当社を利用している全国のビジネスパーソン (20代~40代・男女)
有効回答 :486人
調査期間 :2023年5月31日~6月6日
調査方法 :インターネット調査
※データは小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。

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